最近ネットフリックスでLove is Blindというリアリティーショーの放送が始まりました。
どのような番組かというと、お互い容姿をみることができない環境で、会話のみで結婚相手を見つけるという今流行りのリアリティーショーの一つです。見たことがない方にもイメージしてもらいやすいようにもう少し詳しく説明すると、まず男女が一人ずつポットと呼ばれるブースの中に入って話しをします。簡単に言えば姿の見えないお見合いのようなものです。そうやって10日間のあいだにポットでいろんな相手と話をして、自分に合うパートナーを探し、心に決めた人が見つかったらプロポーズという流れで番組が進行します。
今の時代、パートナーに関する情報は、本人から直接得られるものだけでなく、SNSやネットで非常にたくさんの情報を得ることができます。そんな時代に、このlove is blindでは、相手を知るために頼りになるのは、「声」だけ。そして相手のことを知りたければ相手との会話のなかから引き出すしかありません。出演者たちは、相手の声や話し方、話しの内容から、相手についていろんなイマジネーションを膨らませていきます。相手に求めるものは?どんな結婚生活を思い描いている?専業主婦にはなれないけどそれについてどう思う?
そして出演者たちは、このポットで異性と話すとき以外は、待機室で同性のメンバーたちと過ごすことになります。同性のメンバーたちとは悩みを相談できる一方で、もしかしたら同じ人を好きになっているかもしれない、もしかしたら自分の好きな人は今となりにいるあの人に夢中なのかもしれない、というこれまた心が揺さぶられる環境なのです。
このような特殊な環境で、しかも10日間という超短期間で一生のパートナーを決めなければならない。これはかなりの心理的プレッシャーがかかるだろうことが想像できます。そんななかで出演者たちが悩み葛藤しながらも自分の感覚を信じてパートナーを選んでいく過程、そして婚約してカップルになった二人がいよいよ初めて出会うというシーンは思わず見入ってしまいます。
このリアリティーショーは「人は会話だけで恋に落ちるのか?」という実験としてはとってもおもしろいなあとみていました。でも自分がこうやってパートナーを探したいかというと私はノーです(笑)
なぜノーなのかというと、確かにパートナーを選ぶうえで「中身」「性格」という部分はとても重要だと思います。だけど、その「中身」や「性格」は会話(言語的なコミュニケーション)だけに現れるものではなく、その人の所作や、振る舞い、表情によって表現される割合がかなり大きいと思うからです。
これは顔が綺麗とかカッコいいということではなく、人の印象はその情報の性質によって影響の度合いが違うということに関連します。
有名なメラビアンの法則では、得られた情報がどのように心理的に影響するのかを表しており、その割合は視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%であるといわれています。つまりこのリアリティーショーの中で得られる情報は聴覚情報と言語情報で合わせて45%ということになります。
そして残り55%の視覚情報は、見た目だけでなく、先ほども述べた表情や振る舞いなども含まれます。この企画の意図は「性格」「中身」に焦点をあててパートナーを選んでみよう!というものだと思いますが、視覚情報をすべてBlindしてしまうと見た目が分からないだけでなく、「性格」や「中身」の重要な表現方法である表情や所作も隠してしまうことになるのです。
実際このリアリティショーのなかでも、パートナーになってポットを出てから、その隠されていた55%の影響がじわじわと出ている感じがしました。(ポットでパートナーを見つけた後も、3週間後の結婚式までのカップルたちの物語を追っていきます。そこではまたさらにパートナー同士の深い対話が必要になってくるのでそこも見どころ)。
ということで、自分はBlindで相手を見つけるのはノーですが、では自分は何をもって恋だと認識するのか、どういう人を好きだと感じるのか、その理由について立ち止まって考えるいい機会になりました。
自分一人では自分の姿は見えない。対話する相手がいて、相手の目に映った自分を見て初めて自分を見つめることができる。昔誰かから教わった言葉ですが、恋は目の前にいる相手とその瞳に映る自分を見つめることで、芽生えるものなのかもしれません。