企業のSNSやWebサイトを見ていると、よく似た言葉を目にします。
「お客様に寄り添います」
「高品質なサービスを提供します」
「豊富な実績があります」
「ワンストップで対応します」
どれも間違った言葉ではありません。
社内でも反対されにくく、誰かを不快にさせる可能性も低い、安心して使える表現です。
しかし、同じようなことを多くの会社が発信していれば、お客様から見た違いは分かりません。
誰にも嫌われない無難な発信は、誰からも選ばれない発信になることがあります。
必要なのは、強い言葉で目立つことではありません。誰の、どのような課題に、自社だからこそ何ができるのかを明確にすることです。
無難な発信が増える理由
企業が意図的に、分かりにくい発信をしようとしているわけではありません。
社内でさまざまな意見を調整し、誤解や批判を避けようとすると、少しずつ表現が一般的になっていきます。
対象を絞ることが怖い
「誰に向けたサービスなのか」を明確にすると、それ以外のお客様を断っているように感じることがあります。
そこで、「個人から法人まで」「幅広い業種に対応」「どのようなご相談でも」と対象を広げます。
しかし、誰にでも当てはまる言葉は、目の前のお客様に「これは自分のためのサービスだ」と思ってもらいにくくなります。
強みを言い切ることに自信がない
自社の強みを伝えようとすると、「ほかにも同じことができる会社はある」「絶対とは言えない」という意見が出ることがあります。
その結果、「丁寧に対応します」「お客様を大切にします」といった、否定されにくい言葉へ落ち着きます。
もちろん、強みを誇張する必要はありません。
ただし、他社にも当てはまる言葉だけでは、自社を選ぶ理由は伝わりません。
社内で合意できる言葉を優先している
経営者、営業、現場、広報では、お客様へ伝えたいことが異なる場合があります。
それぞれの意見をすべて入れようとすると、メッセージが増え、結局何を伝えたいのか分からなくなります。
多くの人が反対しない言葉と、お客様の心に残る言葉は、必ずしも同じではありません。
自社のことだけを見ている
発信を考えるとき、自社の商品、技術、実績、歴史など「伝えたいこと」から始めることがあります。
しかし、お客様が知りたいのは、自社の説明だけではありません。
- 自分の悩みに関係があるか
- 何を解決してもらえるのか
- ほかの選択肢と何が違うのか
- 依頼したあと、どのような変化があるのか
- 安心して任せられる理由は何か
お客様の課題や判断基準を確認せずに発信すると、会社側が言いたいことを並べただけになってしまいます。
「嫌われない発信」と「自社らしい発信」の違い
| 嫌われない発信 | 自社らしい発信 |
|---|---|
| 幅広いお客様に対応します | どのようなお客様を特に支援したいかを明確にする |
| お客様に寄り添います | どのような関わり方を大切にしているかを伝える |
| 高品質なサービスです | 品質を生み出す具体的な工程や基準を示す |
| 豊富な実績があります | どのような課題を、どう解決したかを示す |
| ワンストップで対応します | 一貫して対応することで、何が改善されるかを伝える |
たとえば、「お客様に寄り添います」という言葉自体が悪いわけではありません。
問題は、具体的に何をすることが「寄り添う」なのかが伝わっていないことです。
定期的に話を聞くことなのか、状況に合わせて計画を変更することなのか、社内の担当者と一緒に実務を進めることなのか。
会社によって、その内容は異なるはずです。
その違いを言葉にすることが、自社らしい発信につながります。
自社らしい発信は、誰かを否定することではない
発信に個性を出すというと、刺激的な言葉や、強い意見が必要だと思われることがあります。
しかし、自社らしい発信は、競合を否定したり、賛否を起こしたりすることではありません。
自社らしい発信とは、何を大切にし、誰に対して、どのような価値を提供する会社なのかを明確にすることです。
すべての人に選ばれる必要はありません。
自社の考え方や支援方法に合うお客様から、「この会社に相談したい」と思ってもらうことが大切です。
対象を明確にすることは、お客様を排除することではありません。必要としている人に、必要な情報を届きやすくすることです。
自社にしかできない発信をつくる5つの視点
1.誰の、どのような課題を解決したいのか
年齢、性別、業種といった属性だけでなく、お客様が置かれている状況まで考えます。
たとえば「中小企業の経営者」だけでは、まだ対象が広すぎます。
- 社内にマーケティング担当者がおらず、自分で施策を考えている経営者
- 複数の外注先を管理しているが、成果が見えない事業責任者
- 兼任担当者にマーケティングを任せたいが、育成方法が分からない企業
ここまで具体化すると、発信するテーマや言葉も変わります。
2.お客様から選ばれた理由を集める
自社の強みは、社内で考えるだけでは見つからないことがあります。
実際のお客様へ、次のことを聞いてみます。
- 最初に何を知って、相談しようと思ったか
- ほかの選択肢ではなく、自社を選んだ理由は何か
- 依頼前に不安だったことは何か
- 実際に依頼して、何が変わったか
- どのような人へ勧めたいと思うか
社内では当たり前だと思っていた対応が、お客様にとって大きな価値である場合もあります。
3.「やらないこと」を決める
自社らしさは、提供するものだけでなく、提供しないものにも表れます。
- 成果との関係を確認せず、流行している施策だけを提案しない
- 戦略をつくるだけで、実行をすべて社内へ戻さない
- 数字だけを報告し、次の改善を決めない状態にしない
やらないことを決めると、自社が大切にしている判断基準が明確になります。
ただし、他社の方法を批判する必要はありません。「私たちは、こう考える」という形で伝えます。
4.抽象的な言葉を、事実へ置き換える
「丁寧」「高品質」「伴走」といった言葉は、そのままでは会社ごとの違いが伝わりません。
行動や仕組み、実績へ置き換えます。
丁寧に対応
どの段階で、何を確認し、どのように共有するのかを示す。
伴走支援
誰と、どの頻度で話し、どこまで一緒に実行するのかを示す。
豊富な実績
どのような課題に対し、何を行い、何が変わったかを示す。
抽象的な主張より、具体的な事実のほうが信頼につながります。
5.すべての発信に共通する軸をつくる
Webサイトでは専門性を伝え、SNSでは親しみやすさを伝え、営業資料では別の強みを伝える。
それぞれに問題がなくても、共通する軸がなければ、会社としての印象が定まりません。
媒体によって表現方法は変えても、次の内容は共通させます。
- 誰に向けた会社なのか
- どのような課題を解決するのか
- 何を大切にしているのか
- どのような方法で支援するのか
- 依頼すると、どのような変化があるのか
自社の発信を確認するチェックリスト
- 届けたい相手を具体的に説明できる
- その相手が抱えている課題を言葉にできる
- 競合ではなく自社が選ばれた理由を把握している
- 商品やサービスを利用したあとの変化を伝えている
- 抽象的な強みを、行動や事実で説明している
- 自社が大切にする判断基準がある
- やることだけでなく、やらないことも決まっている
- SNS、Webサイト、営業資料のメッセージがつながっている
- 発信内容が、実際の商品や顧客体験と一致している
答えにくい項目が多い場合は、投稿数を増やす前に、自社の顧客、強み、提供価値を整理する必要があるかもしれません。
選ばれる発信は、会社の中にある
自社らしい発信は、目立つ言葉を外から持ってくることではありません。
これまでどのようなお客様と向き合い、何を大切にし、どのような方法で課題を解決してきたのか。
その中に、他社とは異なる考え方や価値があります。
発信で必要なのは、それを新しくつくり上げることよりも、すでにあるものを見つけ、言葉にすることです。
みんなに嫌われない言葉へ整えるのではなく、必要としている人に、自社だから言えることを伝える。
その積み重ねが、価格や知名度だけで比較されず、「この会社にお願いしたい」と選ばれる理由になります。
この記事を書いた人
打田 沙織|株式会社rasiku 代表取締役
成長企業のマーケティングチームとして、事業や顧客、現在の課題を整理し、戦略設計からSNS・広告・Web・PRなどの実行と改善まで支援しています。
会社の強みを整理し、
選ばれる理由を言葉と施策に。
rasikuは、成長企業のマーケティングチームとして、現状と課題の整理から戦略設計、施策の実行・改善まで支援します。
